Top
Works List
Blog
Links
Character
Bachiatari !
  + Net Lovers No.1

  ★この作品は、インターネット初期の頃に書いた作品です。当時パソコン通信やチャットが流行っていまして、題材に選びました。
一番最後の行までジャンプして、スクロールバーで、戻りながらお読みください。チャットなどの過去ログを読む要領です。よろしく!

尚、この作品に登場するハンドル名、HP等には、特定のモデルはありませんので、あらかじめ、ご了承ください。
⇒Jump to Page Last

 (続く) ⇒No.2
 そう・・・ぼくは、この瞬間、ネット・デビューした。

■jun>こんばんわ、はじめまして>all

・・・とにかく、挨拶だけでもして、出よう。

  どうしよう! でも、せっかく挨拶してくれているのに、レスもしないで、退室するのは、失礼だ。

■チーママ>こんばんわ、はじめてかしら?>jun

 えっ!? しまった! 指先が震えて、クリックしてた!どうしよう!  

■お知らせ>junさんが入室しました
■チーママ>はぁ〜い(^^)、アタシの分もお願いねぇ>広
■広>ビール持って来る!>チーママ  

 まったく、チーママさんのいう通りだ、同感、同感・・・あっ!  

■チーママ>暇というより、そういうのこそ、おバカよ、役立たずよ、家庭や会社でまともに相手されないとかで、うちらに八当たりするくらいしかできない最低な奴なのよ>広

 そうなんだ、そういうことがあるから・・・

■広>ここの前に行ってたチャットで友達が言ってたけど、掲示板で逞しいお兄さん募集なんて投稿があったから、メッセージ送ったら、「ホモ、バカ、死ね!」なんてメールが100通も送られてきたんだって、暇な奴もいるもんだよなあ>チーママ  

 ぼくは細身ですよ!身長179cmに体重57キロだもん、年はちょっと離れてるけど、でも、広さんが気にしなければ、ぼくは・・・  

■広>そうだったんだ・・・(^^;<デブ専
■チーママ>あら、いわなかったっけ?うち、デブ専よぉ、細身の子がいいんでしょう、 広ちゃんも細身じゃん、だめね(笑)
■広>誰かいないかな、いい子>チーママ<お店

 学生時代には男の恋人もいたけど、会社の上司の紹介で結婚したものの、やはり同性がいい、子供も出来たし、ここらで、少し息抜きしたいと話していた。  

   広さんは、ここ2.3日前から来るようになったばかりで、年齢は36、情報通信系の会社に勤務していて、既婚、子供もいる。

  最初は違和感のあったおネエ言葉も、このチーママさんの発言のお陰で慣れた。

   チーママさんは、ハンドルネーム通り、ゲイバーのチーママらしく、面倒見がいいという感じで、初心者や新参者に、優しく話しかけていた。

  後には、やはり常連のチーママさんと広さんが残った。

   kuzoさんは、「まったく失礼しちゃうわよねぇ、アタシが触るとしたら、絶対男よ〜(笑)」とおネエ言葉でしゃべくっているが、お固い銀行マンだった。

   過去ログによれば、常連の一人であるkuzoさんが、会社からの帰りの電車の中で、OLに痴漢に間違えられた事を苦笑混じりで語って、帰ったところだった。

  そして、今日も、いつものように、チャットルームを覗いていた。

  でも、掲示板と同じく、なかなか勇気が出なかった。

  参加したい! 何度、ハンドル名を入力し、参加ボタンをクリックしようと思ったことか。

  時には、じっくり話したいからと、別のチャット・・パスワードなどで入室制限があるチャットルーム・・『個室』などというところに流れていく『カップル』もいた。

  挨拶から始まって、今日なにしてたの〜などという日常会話ばかりの時もあれば、話が進んでいくと、お互いの経験談などを話し出したりして、面白かった。

  「男だけの」チャットをロムするのも、日課となった。

  誰かに知られたら、もし、からかわれていたりしたら、・・そして、何より、実際に関わることが怖かった。

   でも、掲示板のメッセージに返信するのも、自分が投稿するのも・・・ためらわれた。

  バーナー広告にちらちら見える『お兄さん』の画像もうれしかったし、なにより、『出会い』を求めている掲示板があることに驚いた。

  そして、出て来たページを貪るように開いては読み、リンクページにジャンプしては読みということを連日連夜していた。

   だから、ネットを始めてまもなく、おそるおそる『関連』ホームページを検索して見た。

   TVなどの生半可な知識ではあるが、『二丁目』にでもいけば、もしかしたら、ハッピーな『出会い』があるかもしれない・・・でも・・・ここは、『二丁目』からはあまりにも遠かった。

   そう・・・男の人に触られることを想像すると、まだ未熟なペニスが硬くなった。ぼくは男の人にしか、興奮しなかった。

  クラスメートたちが、ヘアヌードやAVなどでマスを掻くように、ぼくは、電車の中や本屋などでサラリーマン風のかっこいい『お兄さん』を見ると、便所の個室に駆けこんで、しこしこ扱いていた。

   この世界の誰一人ぼくの乾きを知らず、誰一人ぼくの乾きを癒せる人はいない。そんな孤独感や絶望感に苛まれていた。

   ネットを始める前のぼくは、陳腐な言い方をすれば、乾き切った砂漠で、身も心も潤すものを求めて彷徨う旅人のようなものだった。

 
☆No.1はここからスクロールで上に上がるようにして 読んで下さい。
Copyright © Rino Fujima. All Rights Reserved.