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Bachiatari !
    + GG(ガレージゲーム)シリーズV

V.Naked Run  No.3

 メンバーが着替えている間に、客人たちは隣の倉庫NO.5で、オークションをやっていた。勝利チームのメンバーがNO.5の裏手に集合した。沢口が和巳の服を摘んだ。
「もっと他になかったのかよ。トレーナーにGパンなんて笑われっぞ」
 確かに他の皆はトラッド系のスーツやモード系のニットウェアだ。そんなこと言われてもジーンズやストリート系ぐらいしか持っていない。
「こーいうのしかない」
 奥住が苦笑した。
「やっぱり、もう少し改まったものの方がいいね」
 服なんてどうでもいいと思うが、奥住に言われると次からそうしようかと素直に従えそうだった。
 しばらくして、黒スーツの男がやってきた。GG(ガレージガード)の一人だ。チームごとにばらけていたメンバーが集合した。一人、一人。名前を呼ばれる。ガードの手渡す封筒とカードを手に通りの方に行く。奥住、沢口も去って、和巳は最後だった。
「式場」
 封筒とカードを渡される。カードの表に25番、裏にホテル名とルームナンバーが記入されていた。封筒の中はギャラだろう。
「名前を聞かれたら、カズとだけ言っておけ。パーキングの25番の車に乗って、そのカードを渡せ」
 早足でその場を離れた。
 パーキングに行くと、『25』に大型車が停車していた。黒っぽいベンツだ。その向かいにオーナーに車があった。
・・・あっちのがいいけど・・・
 とりあえず決められたことはやる。25番の車に近づく。後部扉が開いた。
中から百数十キロはありそうな、どっしりと堅太りの男が、身を乗り出して手招いた。
「こっちゃ、来い」
 乗り込む。年は五十くらいか、角刈りに角張った顔、その中央に大きな鼻がデンと座っていて、その下に短い髭を生やしている。開襟シャツにストライプのスーツ。首に太い金のチェーンを掛けて、指には幅広の金の指輪がいくつかはまっていた。
・・・モロ、その世界のヒトじゃん・・・
 和巳の肩を囲んで、手を握ってくる。タバコ臭い息が肩の当たりから、ぶわっと上がってきた。
「こうして傍で見ると、ホンマ、大きいの、あそこでこないな体格の坊主がいるとは思わんかった」
 脂切っていて、スケベおやじそのものだ。今にも、押し倒されそうだ。車が動き出した。和巳が慌ててカードを出した。
「あの、これ!」
 客人が受け取り、見もせずにくしゃっと握り潰した。どういうつもりなのか。
前のナビ・シートにいた男が振り向いた。
「本当にいいんですね。事務所の方で」
 三十代半ば、地味なスーツで、銀行とか役所のエリートみたいな感じだ。
 客人が和巳の手を自分の股間に引っぱって行った。
・・・ゲッ、もう、硬い・・・
 しかも、とても太い。こんなの入れられちゃうのか。ロスト・バックバージンの痛みが思い出される。メチャ緊張してきた。
「ああ、あっちで用意したとこなんか、使えんわ。何仕掛けられとっか、わからんからの」
 客人の手が和巳の首の後ろに回り、押さえ込もうとした。反射的に体を引いていた。
「あ、あの!ゲーム、どうでしたか?!」
 客人が、不機嫌そうに唸った。
「どうって、儂ャ、バスケットなんぞようわからんからの、勝ったからうまいんじゃろ」
 白けた。ゲーム中客たちは、あれだけ盛り上がっているのだから、けっこうわかってると思っていた。もしシロウトでも、楽しかったとか面白かったとか、その程度は言ってくれたっていいだろう。だが、そんな期待をする方が間抜けなのかもしれない。
「しっかし、ほんとにこんなガキに八十万も出したんスか?」
 ドライバーが素頓狂な声で聞いた。五分刈りに柄シャツでちゃらちゃらしている若いチンピラだ。客人が和巳の頬を摘んだ。痛くはないが、ムカつく。
「そや、他のガキは皆細っこくて話にならんかったからな。どっかの兄ちゃんと最後までせり合うて、遂、熱うなってしもうた。それに将門からチケット二十万で買うたから、百万や」
 例のエリート風が苛立たしげに言った。
「まったくもって、無駄な出費ですな。『ランチ』に行けばもっと安くて上等なチキンが買えますよ」
・・・『ランチ』?『チキン』?何だろう・・・
「儂は、『ランチ』のブロイラーより、こういう闘鶏みたいなのがエエんや。硬くて締まっとるからの」
 ドライバーがハンドルを叩いて引きつり笑いをした。
「ケツの穴が、キツキツスからね!ヒヒッ」
 何となくチキンの意味がわかってきた。ヒワイな感じがする。エリート風が、後ろを向いた。薄暗いのに、冷たくてねとっとしていて・・・まるで、蛇のような嫌らしい目をしているのがわかる。
 客人が急に和巳を突き放した。ほっとしたが、不安にもなった。客人を怒らせたりしたら、オーナーに迷惑かける。
「本当は、あの若造に近づこうともてな、ちょろっと匂わせてみたんやが、何のことかって、すっとぼけおって」
 エリート風が顔を前に戻した。
「だから、無駄だと言ったでしょう。将門の親父さんだって、『デーヴァ』の会員での実績を認められてようやく加入できたんですから。まず、正規のネットワークに入らなければ、駄目なんですよ」
 客人が不満そうにしていたが、タバコに火をつけて厚ぼったい唇で咥えた。
「ま、エエわ。今夜のとこは、この坊主でたっぷり楽しませてもらうわ」
 またチンピラがヒッヒッと笑った。
 若造とはオーナーの事だろうか。ネットワークって何だろう。この連中がヤーさんらしいということはわかるが、その他のことはさっぱりだ。ただ客人の相手をしてくるだけと思っていたのに、何だか、妙な具合になってきた。しかも、指定のホテルでなく別のところに連れて行かれるらしい。このままついて行けばいいのか、それとも、拒んだ方がいいのか、和巳にはわからなかった。
 十五分程で車が止った。全く知らないところだ。どこかの駅付近の商店街の外れのようだ。古い商店や小さめの雑居ビルが乱雑に軒を並べている。客人に押し出されて降りた。
三階建てのビル。看板には天乃建業と書いてある。エリート風がすりガラスのドアを押した。
「ご苦労さんです。門脇の兄キ!」「おかえんなさい、おやっさん!」
 威勢のいい声が出迎えた。パアッと明るい中にざっと十人位の若い連中がたむろっていた。客人に背中を押されて、歩き出す。両脇のチンピラ共が、ニヤニヤしたり、口笛を吹いたりしている。これから何をするのかわかっているからだと思うと、顔から火が出そうだった。
奥にガレージの事務所の様にガラスに仕切られた部屋があった。十五、六畳の畳敷きになっていて、テカテカと真っ赤に光る布団が敷いてあった。
ボーゼンとした。靴を脱いで上がった客人がエリート風(門脇と言うらしい)に上着を脱がせてから、自分でシャツやズボンを脱いだ。確か猿股とかいう下着の前が異様に膨らんでいる。
 門脇が出ていった。ガラス張りの部屋はあけすけだ。このままでは、中でのことが外の連中に見られてしまう。強ばった。
「何しとる。上がれ」
 客人がせかした。ぐずぐずしていると、外の連中がはやし立てた。
「公開Pの始まりぃ!」「見られてる方が燃えるぜ!」「早くおやっさんのデカマラ、ぶち込んでもらいなっ!」
・・・こいつら・・・
 恥ずかしさは怒りに転じていた。だが、相手はヤーさん連中だ。今まで喧嘩してきたそこいらの不良やチンケな暴走族とは違う。そう簡単にはいかない。
それに、ここで暴れる訳にはいかない。ローファーを脱いで、バッグを置いた。
「早う、脱げ」
 のろのろとトレーナーを脱ぐ。強ばる手でGパンのファスナーを降ろした。
「いっちょまえにじらしてんのかよ!」「早くチンコ見せなっ!」
 外で野次られてますます手が動かない。なんとかGパンを取り、ソックス、ブリーフと脱いだ。
 客人の目がギラッと光った。厚ぼったい舌を出して、唇を舐めた。猿股を落とす。黒光っている太いモノが勢いよく撥ね上がった。こんもりと膨れ上った先端部分が上を向いている。とても太く見えたビデオのガードのお兄さんたちのモノよりも遥かに大きい。まして、自分やオーナーのなどとは比べ物にならない。穴が裂けちゃうかもしれない。緊張してくる。それに、あの連中の前でなんて、嫌だ。客人が手招きした。傍に行くと、客人が和巳の腕や胸や脚を掴み捲った。
「エエ筋肉しとる。惚れ惚れするわ」
 熱い息が肌に掛かる。気持ち悪い。鳥肌が立つ。
「膝付いて、尺八せい」
・・・尺八・・・?
 言われたとおりに膝を付く。目の前にカーブした肉棒がムッと臭っていた。顔に近づけられた。
「丁寧にやれよ」
・・・フェラチオのことか、そういえば、オーナーのも、奥住サンのもしてなかったな・・・
 急に悔やまれてきた。すぐには口を開けなかった。
 客人がいきなり鼻を摘んだ。
「なっ!?」
 反射的に体を引いていた。客人がつんのめって、倒れかかってくる。とっさに避けていた。
「ガッ!?」
 客人が樽のように畳の上に転がった。
「おやっさん!」「大丈夫スか!?」
 次々にチンピラ連中が飛び込んでくる。
「このガキャ、何しゃがんだ!」「ふざけやがって!」
 あっという間に仰向けに押さえ込まれてしまった。和巳は、完全にブチ切れてしまった。相手が誰だかも吹っ飛んでしまった。手足をばたつかせて、抵抗する。連中が押さえ切れない。
「わっ、すっげえバカ力だぜ!!」「もっと、強く押さえろ!」
 だが、納まらない。客人が呆れた。
「なんや、おまえら、四人もかかって、大人しゅうさせられんのか」
 門脇が冷たい声で言った。
「これで、大人しくさせましょう」
 尖った針先が光っている。注射器だ。
・・・薬!? 
 切れている頭でもすぐにわかった。暴発した。
「嫌だ!」
 左手を押さえていたチンピラが押さえ切れずに、手を放した。和巳は体を起こしながら、右手の奴の顔を張り飛ばした。脚の方も緩んだ隙に蹴飛ばした。
「逃げっぞ!」「捕まえろ!」
 捕まえようとする手を払いのけ、かいくぐって、ジャンプステップで方向を変えた。とっさに服をつかみ取り、部屋を飛び出た。
「ヤロ!」
 外にいた二人が左右から飛びかかってくる。ジャンプ、机の上に飛び上がって、扉の外に逃げた。
「追え!」「逃がすんじゃねぇ!」「ブッ殺したる!」
 口々に罵りながら追ってくる。和巳は、全裸で夜道を走った。全速力で。恥ずかしいとか、そんなことは頭にない。とにかく逃れなければ。ただそれだけだった。すぐ近くに居酒屋があった。飛び込もうとして、気付いた。警察に通報されたら、困るのは自分なのだ。暗い路地に入り込んだ。動悸が納まらない。
こめかみがズキズキして体が震える。黒社会には入り込んでしまったことはわかっていたが、こんな羽目になるとは。
…どうしたらいいんだ。
 持って来られたのは、Gパンだけだった。素肌に直接はく。遠くの方でバタバタと足音がする。きっと連中だ。捕まったら、『薬』を打たれて、ひょっとすると殺されてしまうかもしれない。それに、こんなトラブってしまって、オーナーに合わせる顔がない。でも・・・
 そっと路地から顔を出して、回りを窺った。どこかに公衆電話がないか。幸い尻ポケットに財布が入っていた。ガレージにまだいるかもしれない。なんとか見つからずに商店街を抜けた。広い道路に出た。電話ボックスを見つける。
 テレカを入れて、プッシュした。コールの音が響く。五回、六回、出ない。七回、八回、いないのかもしれない。奴らがすぐそこまで来ているような気がする。すぐにでもここを離れた方がいいのでは?受話器を置こうとした十一回目。
『・・・NO.4』
 あの冷たい声。ほっとしてボックスの中でへたり込んだ。
「・・・」
 だが、言葉が出ない。
『誰だ?』
 答えなくては。
「・・・オーナー」
 ようやく絞り出す。
『式場か?』
 すぐわかってくれた。ぶわっと目が潤む。
「・・・お、俺、客人とトラブっちゃって、事務所みたいなとこで、大勢いて、何か薬みたいなもの打たれそうになって・・・」
 状況をうまく説明出来ない。
『ホテルに行かなかったのか?』
「は、はい、天乃建業っていうとこに連れて行かれて・・・済んません、俺・・・」
 喚きたいのを必死に我慢した。
『今、何処にいる』
 慌てて回りを見回した。ボックスの上の方に住所が書いてある。
「観音台三丁目二十一番地って・・・」
『わかった、その当たりにいろ、今行く』
 ガチャと切れた。来てくれるのだ。そうしたら、落ち着いてきちんと説明しよう。そうしたら、わかってくれるはずだ。近くの物陰にでも隠れていよう。
ボックスを出た。目の前にヌッと幾つもの影が現われた。
「ったく逃げ足の早いガキだ!」「こんなとこまで逃げてきやがって!」
 和巳は身がすくんだ。後頭部にガッとショックが来て、気を失った。

 
 
 


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